死にたがりティーンエイジを忘れない
笹山からは逃げ回った。
見方次第では、わたしはとんでもなく薄情だったと言えるだろう。
でも、笹山の立場に考えをめぐらせるような余裕は、わたしにはなかった。
四年生の笹山が卒業して響告市からいなくなる日を、ただ待ち望んでいた。
その卒業式の日が来るより前に、わたしは竜也と付き合い始めた。
恋愛感情というより、信頼があった。
竜也の前でなら、カラオケで男性歌手の曲も歌えるし、短い髪にジーンズでも平気だ。
笹山が相手だと、そんな自分らしい自分ではいられなかった。
かわいい女にならないといけないみたいな、形のない圧力を感じていた。
違うんだ。
わたしは、生物学的に女であることは否定しないけれど、
女であるという事実を一つの記号にして、その記号にハマるものを与えられたり集めたりなんて、マニュアルどおりの進み方はできない。
そんなんじゃ一歩も進めなくなる。
そのままでいいと、竜也は言ってくれる。
「蒼さんが男だったとしても、おれは蒼さんに惚れてたと思う。家族になりたいって言ったと思う。一緒に住んで、一緒に暮らしていきたいって」
竜也の、ちょっと冗談っぽく笑いながらの言葉は、わたしにも理解できた。