死にたがりティーンエイジを忘れない


オープンキャンパスの中学生用に開放された教室でのことだ。

外からは、部活終わりの高校生の声が聞こえてくる。

オープンキャンパスに参加中の後輩に先輩が会いに来る、という場面も見かけた。


先に食べ終わった雅樹は、さっさと席を立った。


「適当にうろついてくる。ここにいるだろ?」

「たぶん」


午後は校内見学があって、体育館に移動して在校生の学校紹介を聞いて、それから閉会式だ。


「面倒だな、もう……」


思わず文句を言ったら、ひとみが眉をハの字にして、シュンとしおれた。


「ごめんね。蒼ちゃんは体調があんまりよくないみたいなのに、あたしたちに付き合わせちゃって」

「体調悪いってほどのこともないんだけど」

「でも、顔色が悪いよ。無理してるみたい」


無理はしている。

かなり。

そんなこと言えないけれど。


遠巻きに見られている感じがあった。

琴野中の人たちだ。

わたしに声をかけたいのか、ひとみと話してみたいのか、それとも雅樹狙いなのか。


弁当の味がしない。

匂いだけが鼻を刺激する。

作り立ての料理とは違う、保冷剤でどうにか鮮度をキープした、弁当特有の匂いが。

空腹だったら嬉しいはずのその匂いなのに、わたしの胃はいつも痛くて不快で、

食べ物をおいしそうだと感じることができない。


< 78 / 340 >

この作品をシェア

pagetop