死にたがりティーンエイジを忘れない
イヤな気分になったのは、どうしてだろう?
嫉妬とか、そういうのじゃなくて。
あせりというのでもないし。
雅樹が変わってしまった。
恋愛なんて興味ないみたいに子どもっぽくてサバサバしたやつだったのに、それをやめたんだ。
そう思うと、大人になることを拒みながら何かにしがみ付いている自分が、ひどくバカバカしい人間に感じられた。
いや、当たり前のことなのに。
時間が流れれば、人は変わる。
雅樹は背が伸びて声が低くなって、そのぶん、内面も。
わたしだって変わってしまった。
違う方向へと変わっていく誰かを、雅樹やひとみを、非難したり遠ざけたりする正当な理由なんて、どこにもない。
「なあ、蒼。好きな人いねぇの? 今日の昼に話した琴野中の男子が、蒼は一匹狼の優等生で、相手にしてもらえないって言ってた。
前の学校に彼氏がいるんだろうって噂があるらしいけど、そういうんじゃないよな?」
「興味ないだけ。好きな人とか恋愛とか、意味わかんない。学校は勉強しに行ってる。それ以外、ないよ」
「そっか。まあ、意味わかんないってのは、おれも同感だけどね」
「彼女いるんでしょ?」
「いるけど、妹の友達と大差ないっていうか。おれんち、妹の友達が来て遊んだり勉強したりって、昔からよくあるだろ。おれが全員のにいさん役。
付き合ってる子もさ、後輩だし、感覚がそれと一緒なんだよ」