死にたがりティーンエイジを忘れない
「変なことしたら、自分が汚れる気がする。自分の経歴に傷が付くのがイヤというか。失敗したくないって気持ちがある」
「女の子みたい」
「男だって、別に、おれみたいなやつくらいいるよ。経験人数が多けりゃカッコいいみたいなの、わからなくはないけど、自分がそれをできるかっていうと無理。汚れたくない」
「彼女に対して失礼すぎるよ。汚れるなんて言葉」
「でも、そうしたいって気持ちがないのにそういうことするのも、ひでぇじゃん。おれはそこまで悪くなれない。ガキだよなって思うけど、純粋なものがいいっていうこだわりが強すぎる」
「じゃあ、何で付き合うことにしたの? その時点で、もう……」
「わかってるよ。わかってんだよ。あのときは好奇心が勝って、手を出してみたいとか思って。でも、向こうは本気だから、おれは逆に何もできなくなった。遊ぶとか試すとか、できない」
雅樹は頭を抱えて髪を掻きむしった。
「バカだね」
「知ってる。彼女のこと、嫌いじゃないからこそ別れたいって思ってて、こういう論理的じゃないことをやろうってのも、かなりバカだよなって」
「別れたい?」
「別れたいよ。続けんのがつらい」
「バカすぎ。別れるほうがいいかもね。彼女のためにも」
「なあ、蒼。吹っ切れたいから、ちょっと協力して。おれと蒼だったら、恋っていうの、まずないだろ。
男同士みたいな感覚ってとこ、おれにはあって。たまたま蒼が生物学的に言えば女だったってだけで」
「まあ、それはたぶん正しい感覚だけど」
「じゃあ、あの、十秒くらいじっとしてて」