死にたがりティーンエイジを忘れない
同じ世界で生きられない
智絵のいない二学期が始まった。
わたしは今年、体育大会には出ないと最初から宣言していた。
親はイヤそうな顔をしつつも、あきらめた様子でわたしの欠席を認めた。
文化祭は、去年とはやり方が変わっていた。
去年の文化祭の準備期間は、智絵だけに限らず、ほかのクラスでもたくさんの問題が起こったらしい。
クラス単位で縛るのはうまいやり方ではない、と先生たちは判断したらしい。
今年の文化祭は、初めからクラスを解体した状態で企画を進めていく。
ステージ企画は劇と合唱とバンド演奏、展示企画は工作と学習まとめと校舎内の階段アート、店舗企画はお化け屋敷と喫茶店、
といった具合で、やりたい企画を選んで参加するスタイルだ。
やりたいものなんてなかった。
文化祭も欠席してしまいたかった。
でも、担任がわたしに先手を打った。
「今年はね、教員も企画をやることになってて、ぼくはわくわく科学教室的なのをやるんだけど、アシスタントやってもらえない?」
午前と午後に一回ずつ、見た目の派手な実験をしてみせるんだそうだ。
担任は若い男性で、けっこうカッコいいと評判で、授業もわかりやすい。
そんなキャラクターだから、白衣を着て実験をするだけの企画で観客を呼べる見込みなのだそうだ。
「わかりました。やります」
そう答えたのは、気楽だなあと思ったから。
当日、実験教室に関わる間は理科室にいられる。
人混みの中にいなくてすむ。
事前の準備期間にも、人間関係にわずらわされずにすむだろう。