死にたがりティーンエイジを忘れない


その放課後、ひとけのない靴箱のところで上田に声をかけられた。

美術室に向かう途中らしかった。


「よかったら、美術部の展示、見てね。ぼくの絵もあるし、たぶんぼくも美術室にいるよ。放送の当番、今年はやらないことになったから、気楽でいい」


でも、美術室に行ったって、智絵の絵はない。

去年の、智絵の絵だけが展示されていないのを知ったときの絶望感を、美術室に行ったら思い出しそうだ。


わたしは、上田に小さく会釈して靴を履いた。

上田はわたしの背中に声をかけ続ける。


「ノートのこと、聞いちゃったよ。不登校の友達に届けるために、毎日きちんとノートのまとめ直しをしてるんだって」


わたしは思わず振り向いた。


「誰から聞いたの?」

「よそのクラスの人。担任が昨日、クラス全員の前でその話をして、授業をちゃんと聞けとか友達を大事にしろとか、お説教したらしい」

「最悪……」


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