雨のち晴れ
しばらくの間、気まずい空気が流れた。
この空気をどうすればいいかわからず、私は一生懸命に話題を探した。
「あの......」
私は無理やりこの空気を断ち切ろうとした。
すると
「美琴ちゃん、ごめんなさい!」
と、いきなり晴馬のお母さんは私に頭を下げた。
私はそんな状況が理解できず、何も言うことができない。
何か言わなきゃいけないってわかってるのに、言葉が出て来てくれない。
「私、美琴ちゃんにひどいことを......」
そう言った晴馬のお母さんの目から涙がこぼれた。
「それに、美琴ちゃんがイジメを受けてるって知って、私どうしたらいいのかって......」
「そんな、私は......」
「あの日、一番辛かったのは美琴ちゃんだった。今もきっと......」
辛かった。
苦しかった。
誰にも頼ることもできず、一人ぼっちだった。
今だって.......
「確かに、私は辛い思いをしました。今もすごく苦しいです。でも、それは誰かのせいだと言えるものじゃない。だから、謝らないでください」
「美琴ちゃん......」
晴馬のお母さんだって辛いはず。
むしろ、一人息子を亡くした母親の悲しみは私にはわからない。
「私は大丈夫ですから」
と、少しの嘘を隠すように笑って言った。
でも、そんな私の笑顔の裏の嘘を見抜かれてしまったのだろうか。
晴馬のお母さんは私を抱きしめてくれた。
「泣かないで」
そう言って私の頬を伝っていく涙を拭ってくれた。
私はいつのまにか泣いてしまっていたのだ。