雨のち晴れ

「ん?」

突然一粒の雨が私の上に降ってきた。

「雨だ.....,」

ポツポツと雨の量が増えて行く。

さっきまで晴れていたはずの空も今は厚い雲に覆われている。

せっかくのデータが台無しだよ.....

私がそんなことを思いながら空を見上げていると、突然背後から「危ないっ!」という晴馬の声がした。

晴馬?

背後を振り返ろうとした私の背中を誰かが勢いよく押した。

そのまま地面に倒れこむ。


ーキキィ.....!ドン!


その瞬間、すごい音が街中に響き渡った。

慌てて振り返るとそこには信じられない光景が広がっていた。

人混みの中に突っ込んでいる車と、歩道に横たわる人々。

な、何が起こったの......

その光景があまりに残酷で現実だと受け入れることができないでいた。

「大丈夫か!」

「しっかりしろ!」

「助けて!」

「痛い......痛いよぉ......」

「大丈夫だからね」

そんな声がいろんなところから聞こえてくる。

携帯電話を手にして叫んでいる人、目を背けている人、泣いている人もいる。

「晴馬......」

そう私は大切な人の名前をつぶやいた。

そうだ.....晴馬

晴馬どこに行っちゃったの?

さっきまで隣にいたのに

『危ないっ!』という声。

あれは間違いなく晴馬の声だ。

まさか......

違う、そんなこと考えちゃダメだ

彼はきっと大丈夫

私はそう自分に言い聞かせながら晴馬の姿を探した。

大丈夫だよ.....
< 3 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop