雨のち晴れ
『美琴へ これから先もよろしくな』
と、それだけ書いてあった。
くだらなくて、短い言葉が一つだけ。
「バカ......」
何が、これから先よ
あなたからいなくなったくせに、勝手にいなくなったくせに
今更だよ......
それに、これくらい自分の口で言いなさいよ
また、涙が頬を伝っていく。
何も言ってくれずに勝手にいなくなった晴馬を私は一生許さない。
ただ、晴馬はあの日、記念日のことを忘れていなかったんだ。
ずっと覚えててくれて、プレゼントまで用意してくれていた。
ちゃんと、あの日に渡して欲しかった。
あなたから。
でも、一年遅れのプレゼントは私に届いたよ。
晴馬の気持ちも。
「晴馬、ありがとう......」
ネックレスとカードを抱きしめる。
「美琴ちゃん......」
そう言って、晴馬のお母さんは私の頭を撫でてくれた。
泣いてばかりだと心配かけてしまう。
慌てて涙を拭う。
「ありがとうございました」
と、私が笑って言うと
「美琴ちゃん、幸せになって」
そう晴馬のお母さんは彼が生きていた頃と同じ、明るい笑顔で私を見つめて言った。