雨のち晴れ
「太陽も言ってただろ?大切な人を守りたい、幸せに笑っていて欲しいって」
「あ......」
去年の夏、晴馬の命日に太陽に言われたこと。
「俺も同じだった」
と、晴馬は私を真っ直ぐに見て言った。
「今更......」
そう、私が小さなつぶやくと、晴馬はとても苦しそうな顔をした。
思わず本心が口から出てしまった。
「でも、会いに来てくれて嬉しかった」
「え?」
私の一言に晴馬は驚いた顔をしている。
「ふっ」
久しぶりに晴馬の驚いた顔を見てつい笑ってしまった。
真剣な話の途中なのに。
「なんで笑ってるんだよ」
笑っている私を見て、少し不機嫌そうな顔をした。
「晴馬、全然変わってないなって思って」
なんでだろう、すごく嬉しい。
「あ、伝えたかったのってそれだけ?」
「そ、それだけ?」
「それだけを伝えに来てくれたの?」
再び晴馬は驚いた顔をした。
『それだけ』
だってそれはもう私にはわかっていたことだから。
「それよりも、私はネックレスとメッセージカードについてを......」
「あ、あれはいつ渡せばいいのか、タイミング?っていうのがわからなかったんだよ」
と、晴馬はおどおどしている。
「えー?それだけ?」
と、私は戸惑っている晴馬に少し意地悪をするように言った。
「あ、もしかして気に入らなかったとか......」
私が怒っていると思ったのか、晴馬は焦っている。
「違うよ。ちゃんと渡して欲しかったし、あんな簡単な言葉、直接言って欲しかったの」
そう言って、焦っている晴馬に私は頬を膨らませてみせた。
「あ......それは、すまなかった」
そんな私を見て、晴馬は少し落ち込んでしまったようだ。
「でも、嬉しかったよ」
と、ちゃんと本心も伝えなきゃ。
「嬉しかった?」
「うん。だってちゃんと記念日、覚えててくれたんだもん」
「それは覚えてるだろ」
「え?」