【極短】誰よりも可愛いオレの猫
「あ、おかえり。樹」
オレを迎えたのは、ソファでカップのアイスを食べてる瑞希。
……ジャージ姿のまま。
「ただいま。……おまえ着替えろよ」
「なんで? 別にいいじゃん。楽なんだもん。コレ」
「誰か来たらどうすんだよっ。大体、それ薄くなってて下着とか透けてるし。……見られたら困るだろ」
親切心でそう言ったオレに瑞希はきょとんとして……そしてにっと笑う。
「見られたら困るって樹が?」
「……」
「ねぇ、樹が困るんでしょ? やきもち妬きだから」
「つぅか、そのアイス、オレの。……あっ!!しかも一番高い奴食べんなよっ」
「だって名前書いてなかったもん……きゃぁっ!…分かった!あげるからっ」
後ろからヘッドロックすると、瑞希がオレの腕にしがみつきながらアイスを差し出す。
なにが、あげるから、だ。
「もとからオレのなんだよ」
瑞希から受け取ったアイスを口に運ぶと、瑞希がオレをじっと見つめてきて……その真剣な表情に、思わずオレは手を止める。
「なんだよ」
「今日、タイム測定だったでしょ? ……どうだったのかなって」
「ああ」
「ああ、じゃ分からないし」
「自己新出してきた。……まぁ、どうなるかは監督が決めるだろうけど、あのタイムなら多分……おっと…あっぶね、アイス落とすとこだった」
隣から急に飛びついてきた瑞希に、オレはなんとかバランスを保つ。
手加減とか力加減を知らないのか、瑞希は平気でオレに飛び乗ってきたり抱きついてきたり……
おかげで油断も隙もあったもんじゃないし。
「よかった~……あたし、樹が心配でよく眠れなかったんだから」
「よく言うな。今朝起こしても起きなかったのはドコの誰だったっけなぁ」
「あたしの林檎うさぎシールのおかげだね」
オレに抱きついたまま見上げて笑う瑞希に、オレはシールの事を思い出して瑞希を睨む。
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