年下ワンコ幼なじみが可愛すぎてツラいです。
~~~side空~~~
今日は帰るときに先生に捕まってしまって、課題のプリントをホッチキスで留めるという苦行を強いられた。
自分のクラスの人数分だけで良いとは言われたものの、僕のクラスは自分も入れて40人。
うみちゃんをあまり待たせてしまわないように急いで冊子作りに取り掛かった。
冊子作りから解放された頃、日は傾き始めていた。急いで玄関に向かうが、彼女の姿は見当たらない。
靴箱をみると、まだローファーと上履きが入れ替わっていないので、先に帰った訳ではなさそうだ。教室に行ってみよう。
3年生の教室は、誰もいなくても1年生の教室とは何か雰囲気が違う。3年生に対する畏敬なのか、3年生の受験モードのピリピリが残っているのか、何か近づき難い感じがする。
海美ちゃんの教室に近づくにつれ、歌声が大きくなっていく。男女2人で練習をしているようだが……女声は聞き覚えがある。
胸がザワザワして、進む足も速くなる。
教室には、海美ちゃんと「黒田くん」がいた。
微笑み合いながら、楽しそうに2人でハーモニーを奏でて。
その瞬間、僕の何かがプツン、と音を立てて切れてしまった。
腹の奥からふつふつと怒りが込み上げてくる。
彼女に近づくな。僕のものだ。唯一無二の番なんだ。
でも、以前彼女が黒田くんをカッコイイと言っていたのを思い出す。
急に怒りが全て絶望に変わった。
どうして、彼女は僕を想ってくれない?こんなに僕は君のことが好きなのに。いや、愛してる。この世の誰よりも。
どれだけ側にいても、彼女はクルクルと表情を変え、僕以外のものにも笑みを向ける。
それどころか、僕以外の誰かを選び、伴侶とするかもしれない。
…………そうなったら、多分僕は壊れる。
彼女が他の男の名前を呼び、笑い、愛し愛されて、いつか子供が生まれて……
絶対に嫌だ。その相手は自分でなくては。
教室を見て、そのように想像してしまった。
「黒田くん」とこれ以上一緒に居させてはいけない。反射的にそう思った。
「何してんの」