年下ワンコ幼なじみが可愛すぎてツラいです。
恐怖
~~side海美~~
ひどい。ひどすぎる。
先程の公園での出来事をまた思い出して、怒りのような悲しみのような……なんだかよく分からない涙が溢れてきた。
私と黒田くんはあくまで歌の練習をしていただけであって、恋愛的な雰囲気にはなっていないはずだ。それなのに空に「楽しかった?」などと責められて……。
何で私はこんなにモヤモヤしてるんだろう……?
家に帰っても隣家に空がいると考えると、何となく家に帰りたくなくて、大通りへ出てきてみた。
「あれ、海美?」
後ろからの声の主は有紗だった。
「ありさぁ……!!」
彼女の顔を見た瞬間とても安心して、涙腺が崩壊してしまった。
ーーーーーーーーー
「なるほどねぇ~。空君、ついに踏み出したか」
近くのショッピングモールのフードコートの端っこで、2人でポテトをつまみながら有紗に話を聞いて貰っている。どうやら彼女は塾帰りのようだ。
ちなみに、親には有紗といるので遅くなる、と連絡済みだ。
「踏み出した?……どういうこと?」
「うーーーん。その答えを言うのは私ではない筈だから教えられないかなー。でも、海美にアドバイス的なのはできるかも?」
「お願いします!」
自分だけで考えても、同じところを巡るだけで前に進まないので、少しでもアドバイスを頂けるというのならば本当に有難い。
「まず、空くんのことはどんな風に思ってるの?」
「どんな風に……幼なじみで、大事な弟みたいな?」
「じゃあ、黒田くんは?」
「えっと……かっこいいクラスメイト?」
有紗はフムフム、と顎に拳をあてて頷いた。
「じゃあさ、空くんに一度も会わない1日と、黒田くんに一度も会わない1日は、どっちが嫌?」
「ええーーー……どっちも嫌かな……?」
「じゃあ質問を変えるけど……海美以外の女の子と仲良くしてるのを見てしまうとして、空くんと黒田くん、どっちが嫌?」
「…………」
想像してみた。
黒田くんは爽やかで優しくて、男女共に人気の高い人だから、私以外の女の子と仲良く喋ってたとしても「そういう人だから」と割り切れる。
……でも、空は?
正直、私以外の女の子と仲良くしてる所を見た事がない。小さい頃はずっと私の後をついてまわって、いつの間にか私の手を握って隣にいるようになって、今では私が空に頼り切っている感じだ。
その空がもし私以外の、同じ学年の子とかと仲良く行事とか部活とかしていたら……
「嫌だ。」
すとん、と心に落ちてきた。
有紗は、ふっと笑った。
「それが海美の答えじゃない?“友達”と“好きな人”の違いでしょ。」
「好きな……人……」
顔が一気に熱くなった。
まさか、ずっと一緒にいたあの空に恋をするなんて。
「その気持ち、伝えないの?」
「……でも空は獣人だから、ほぼ100%でフラれるよ……」
「その心配はないと思うけど……」
有紗は何かボソッと言ったが、聞こえなかった。
「とりあえず、想いが通じようが通じまいが、想いを伝えることに意味があると思うけどなー」
「……そっか。ありがとう、有紗!なんかスッキリした」
「どういたしまして。持つべきものは素晴らしい親友だ、と褒めてくれて良いわよ?」
あはは、と笑い合った。