年下ワンコ幼なじみが可愛すぎてツラいです。
【空side】
体育の授業は、着替えのために5分前に終わった。教室に戻ろうとしていると、木に何か引っかかっているのが見えた。
気になって取ってみると、なんだかよく分からない記号と地図、問題が書かれていた。
「あ……」
そして、右下の名前の欄には、『橘海美(たちばな うみ)』の文字。
(届けた方がいいよね…?)
「空ー?早く戻ろうぜー」
友達が、早く、と催促する。
「あ、うん。」
結局僕は、プリントを握ったまま、校舎内へ入った。
授業終了のチャイムが鳴った時、ちょうど僕はうみちゃんがいる教室の前に着いた。
ちょっと待ってたら出てくるかなーと思っていたら、ガラッと勢いよくうみちゃんが出てきた。
「あ、うみちゃん」
「ごめん空、落ちたプリント取りに行くから、後で!」
そう言ってうみちゃんは走り出そうとしたので、僕はパッと手を掴んだ。
(……あれ、うみちゃんの手、こんなに小さかったっけ…?)
疑問が湧いたが、今は関係ないか、と頭の隅に追いやる。
「うみちゃん、プリントってこれ?」
持っていたプリントを見せると、うみちゃんはパッと表情を輝かせた。
「そう!これこれ!!空が拾ってくれたのね、ありがとう!」
「ううん、見つかって良かったよ。勉強、頑張ってね!」
そう言うと、うみちゃんはぎゅーーっと僕を抱きしめた。
「ほんっとに、ありがと!空、大好き!」
「う、うん。僕も大好きだよ。」
汗かいてるから臭いだろうな、と思っていたら、背の高い男子生徒がこちらをちらっと見た。
僕と目が合うと、ニコッと笑って、僕らがいる方と逆の渡り廊下の方から、教室へ帰っていった。
シューズには、『黒田』の文字。
もしかして、うみちゃんが好きって言ってた人かな?
あーあ。うみちゃん、気をつけないと……
僕も一応男だからね?誤解されちゃうよ?
……心配いらないか。僕はどうやったって、うみちゃんの弟でしかない。
こんなに好きなのに……
もちろん、女の子として。