恋を乞う。
小さな頃、言葉を真似してしまうほど剣術の道場に通い
悪知恵を仕込まれるほど、男女問わず話せていた彼女が何故
あのおぞましい出来事が起きたのは、俺が高校一年、彼女が中学二年の冬の日に起きた
あの日
彼女は中学の教師の手伝いで遅くまで残っていた
辺りが真っ暗になった午後六時、さすがに危険だと判断した教師は彼女に親を呼ぶように伝え、職員会議に行った
とはいえ、前にもいったとは思うが、彼女の両親は海の向こう
ほかに親戚も居ない彼女は普段なら通じる俺の携帯に電話した、がバイト中、携帯はロッカーの中にいれられ通じることはなかった。
仕方なく一人で帰った彼女をその帰路で呼び止めたのは、以前より彼女をストーカーし接近禁止命令のでていた男
逃げようとする彼女の腕を力任せに掴み、道に押し倒した
「逃げるな、殺すぞ」
それでも抵抗を続けた彼女を男は殴り、そのまま、犯した。
俺が彼女を見つけたのは、それが行われた数分後
たった数分、だが彼女の心を殺すのには十分な時間だった。
状況が飲み込めたとき、俺は男を殺そうとした
本気で、殺してやろうとした。
今でも、近所の目撃者がもう少し後に通報してくれていたらアイツをやれたのに、とすら思っている。
現行犯で男はつかまったものの、16だった男の刑は、少年法が適用されて、直ぐに出てくるらしい。
それに比べて彼女の負った傷は深く、それから一年は俺以外とは一言も話すことすら適わなかった。
時間が経ち、女とは話せるようにはなったが、男は俺のほかに話すことはおろか
触れることすら出来なくなった。
それが彼女の二つ目の秘密だ。