シンデレラは騙されない

私はその手の風貌の男を信用するには、生真面目過ぎた。
親切に持ってくれているスーツケースを、さりげなく奪い返す。

「ご、ごめんんさい…
私、本当に時間がなくて、迷っている暇はないんです」

その男はわざと肩をすくめて、またスーツケースを奪い返した。

「知ってるよ。
連れて行ってあげるから、付いておいで」

私の心臓がドクドク鳴り出す。
この男を信用していいのか全く分からない。
でも、他に道を歩いている人はいないし、私は天を仰いで決心をする。
この男を信じるしかないって。

私は後ろからその男をずっと観察していた。
身長は178cmくらいでちょっと細身、でもギターケースを抱えて私の大きなスーツケースをゴロゴロと転がしている姿には力強ささえ感じてしまう。

「ねえ、俺達、どっかで会ったっけ?」

いや、絶対に会ってない。
ていうか、これってナンパ??

「会ってないです」

「絶対?」

「絶対です」

その男は急に立ち止まり、私の顔をまた覗きこんだ。





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