シンデレラは騙されない


栄楊軒?
その紙袋には大きく栄楊軒と書いてある。
中華まんの彼だったり、栄楊軒の彼だったり、凛様って私を笑わせてるのかな…?
そんな事を思ったら、本当に可笑しくなってきた。

「凛様…
その方は、中華まんの彼でも、栄楊軒の彼でもありません」

凛様は意地悪そうに私を見る。
そして、鼻でクスッと笑った。

「じゃ、名前を教えてよ」

私は自分が抱えている紙袋を見るたびに、笑いがこみ上げる。

「彼の名前は佐々木さんって言います」

凛様は目を細め口角だけを上げてため息をついた。

「あ~あ、俺に名前教えちゃったよ。
麻里ってマジ心配だな。
しっかりしてそうに見えるけど、案外簡単に騙せる」

私はやっと事の成り行きに気が付いた。

「佐々木さんって言っちゃいました?」

「うん、今もね」

凛様は笑いながら私の肩を引き寄せた。

「本当に心配だな、あと、とにかく可愛い。
どうしようっていうくらいにね」



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