シンデレラは騙されない


「……麻里? 
俺、麻里を困らせてる?」

何も言えない自分が腹立たしい。
凛様に会いたくてしょうがなかったくせに…

「今日のデートは俺達の秘密にすればいいんだよ。
絶対見つからないようにするから。
っていうか、絶対に見つからない。

だって、斉木家の人間は、今、皆で軽井沢に行ってるから」

そんな問題じゃないという事は、私も凛様も嫌というほど分かっている。
でも、凛様が好き、凛様に会いたい気持ちに嘘はつけない。

「今から、猛ダッシュで準備する。
でも、一時間はかかるかも…」

スマホの向こうで凛様の優しい笑顔が見える気がした。

「了解。
俺もそれぐらいかかるから。
じゃ、ミッキーに会いに行こう。
ギューギュー詰めのディズニーは初めての体験だけど」

私ははいと返事をして電話を切った。
高揚感で頭がおかしくなりそう。
今日という日を心から楽しみたいと、素直に思った。
きっと、これが最初で最後のデート。
こんな夢のような偶然は二度と起こらない。

そして、私特有のくだらないマイナス思考はここに置いていく。
家を出た瞬間から、使用人でも御曹司でもないただの男と女に戻るために。



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