シンデレラは騙されない
そして、私にとって憂鬱な一日がやって来た。
今日は、平塚悠馬さんと食事に行く日…
凛様がモーリステイラーホテルまで、車で送ってくれる日…
実は、昨夜、仕事から帰ってきた私を、会長が笑顔で迎えてくれた。
いつもと違う会長の様子に戸惑っていると、奥にあるもう一つの応接間に連れて行かれた。
そこには品のいい濃紺のXラインのワンピースがハンガーに掛けられていた。
全体的にシンプルな感じのそのワンピース、だけど、ふわりと広がっているスカートのフレア感がすごく可愛らしい。
私がそのワンピースに見入っていると、隣で会長が微笑んでこう言った。
「明日のデートに着て行ってほしいと思って。
私の秘書の若い女の子を連れて、久しぶりに若い子のお洋服が置いてあるショップを回ったの。
これが一番麻里先生に似合うと思って、勝手に買ってきちゃった」
私はこんな高価な物を受け取っていいのか分からずに何も言えずにいると、会長は私の手を握ってくる。
「星矢の事でいつも頑張ってくれてるお礼だと思って受け取ってほしい。
悠馬さんを驚かせたいのよ。
うちの麻里先生は、とっても素敵な女性だって事をね」
私は胸が詰まって尚更何も言えない。