シンデレラは騙されない
「何だか気を遣わせてしまって、すみません…
でも、嬉しいです。
会長がそんな風に私の事を気にかけてくれてた事が…」
会長は柔らかな笑みを浮かべ、私にそのワンピースを似合うか当ててみる。
「麻里先生は本当に美人…
原石っていうのかしら、磨けば最上級の女性になれる。
私は、麻里さんにそういう女性になってほしいの。
性格も真面目で頑張り屋で、それでいて愛情深くて。
ごめんね…
余計なお節介だとは思ったんだけど、どうしても私の方が麻里先生にお洋服をプレゼントしたくて」
私は会長の真心が素直に嬉しかった。
でも、凛様の想いが大き過ぎて、そのプレッシャーに潰されそうになる。
「明日、このワンピースで参戦します」
こんな軽いジョークを言うしかない。
この場を丸く収めたかったから。
会長も一緒に笑ってくれた。
そして、満足したように私にこう囁いた。
「綾にも、もちろん凛太朗にも内緒よ。
特に凛太朗にはね。
だって、私のする事が麻里先生の自由を奪ってるんだって目くじらを立てるから」
私は苦笑いをして俯いた。
明日が何事もなく終わってくれる事を祈りながら。