シンデレラは騙されない
もどかしい、恋人
斉木家は母屋の隣に大きなガレージがある。
私がそのガレージを覗きこむと、そこに凛様が立っていた。
凛様は私を見ると、一気に不機嫌になる。
わざとらしくため息をついて、助手席のドアを思いっきり開けた。
「ありがとう。
凛様、今日はよろしくお願いします」
それでも凛様は何も言わない。
私が助手席に座ると、ドアを閉める前にもう一度私を舐めるように見た。
「何でそんなにめかしこんでるの?」
「え、だって…」
凛様はますます不機嫌な顔をしてドアを閉め、そして、更に大きなため息をついて運転席に乗り込んだ。
「ねえ、このまま他の所に行こうか?」
「む、無理です…」
凛様はとりあえず車を動かした。
この車、多分、すごくいい車に違いない。
車には全く疎い私でもこの車が外国車だという事は分かる。
だって、内装が日本車じゃない。
全てが高級で最高に乗り心地がよかった。
凛様にとっては重々しい状況でも、私にとってはこのドライブが少しだけ嬉しかった。
だって、凛様と久しぶりに二人きりになれたから。
この素敵な車の思いがけないドライブに少しだけ感謝した。