シンデレラは騙されない
待ち合わせはロビーの中心に位置する大階段の横だった。
そのホテルは外観の現代的な見た目とは違い、中へ入るとヨーロッパの宮殿を思わせるアンティーク風の落ち着いた雰囲気で、ホテルに入った途端そのギャップにため息が出る。
目の前に見える大きな階段も、18世紀のヨーロッパにタイムスリップしたみたいな錯覚を抱かせた。
そして、その大階段の横に並んでいるベンチの一つに平塚さんが座っていた。
平塚さんは私を見つけると、微笑んで立ち上がった。
でも、すぐに表情が変わる。
私の隣を歩く凛様に驚いたみたいで、天井を仰いで苦笑いをした。
「凛太朗君、久しぶりだな。
麻里ちゃんをここまで送ってくれてありがとう」
平塚さんの言葉には少し刺がある。
「お久しぶりです。
送りがてら、ちょっと悠馬さんと話がしたいと思って」
平塚さんは私を見て、そして腕時計を見た。
「お店を予約してあるからあまり時間は取れないけど、それでもよければ」
凛様は軽く頷いた。