シンデレラは騙されない


「何で?」

義兄さんはため息のように息を吐く。

「それは誰よりも凛太朗君が分かっている事じゃないか?」

「さっぱり分かりません」

俺はそんな事は認めたくない。
分かっているなんて、死んでも言いたくなかった。

「凛太朗君でさえ、この家から逃げ出した過去がある。
敷かれたレールが窮屈過ぎて、自由に羽ばたきたくて、そうだろ?」

俺はただ黙っていた。
きっと、義兄さんは、俺の事より麻里の事を心配している。
俺を責める事によって、俺に反省をさせたがっている。

「麻里ちゃんを飼い殺しにしちゃダメだ。
二人は愛さえあればって思っているのかもしれないけど、現実はそう甘くない。
それは、凛太朗君が一番分かっている事。

甘い言葉や結婚を匂わせて、麻里ちゃんをがんじがらめにする事は僕が許さない。
彼女は幸せになる権利がある。
そして、その相手は君じゃない」

スマホを握る手が容赦なく震え出す。
そんな事、あなたに言われる筋合いはないと。



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