シンデレラは騙されない
苦しいほど、純愛
「お姉ちゃん、お母さん、行ってきます!」
今日は、弟の斗真の最後の試験日だ。
「斗真、頑張って!
いつものように平常心でね、絶対、大丈夫だから」
私は、雪の降る中、ダッフルコートとマフラー姿で歩いて行く斗真の後ろ姿に涙が出そうになる。
斗真の目指している大学は、私立になるけれど、斗真の大好きな理系分野を専門としている学部はそこしかない。
私立の中では超難関校と言われているこの大学に合格するため、高校に入ってからの三年間、斗真は必死に勉強してきた。
合格はもちろん、入学金免除とか返済無しの奨学金を手に入れるため、上位での合格を目標に、本当によく頑張った。
特に、突然、私が斉木家から帰って来た日以降、斗真は私に心配をかけまいと更にギアを入れて勉強に励んだ。
あの日の事を考えると、今でも息をするのが難しくなる。
あの時、どうにもごまかす事ができず、結局、お母さんだけには本当の事を話した。
HAKASEグループの三代目となる御曹司の息子さんを好きになってしまったと。
そして、彼も私に好意を寄せてくれていて彼は結婚したいと言ってくれたけど、私の方が身を引いて我が家へ帰ってきた事を。