シンデレラは騙されない
その頃の私は、食事も喉を通らずに一気に3キロも痩せてしまった。
お母さんはそんな風に逃げ出して来た私の事を責めもせず、ただ優しく抱きしめてくれた。
「辛かったね…」
そう一言だけ囁いて。
弟の斗真は勘のいい子だから、言わないだけできっと気付いていたに違いない。
ある日、私の部屋に入ってきた斗真が泣きながらこう言った。
「お姉ちゃん、俺は、奨学金で大学行くから。
だから、そんなに無理して働かないでいいよ。
お姉ちゃんのそんなボロボロになった姿、見たくないから…」
その頃の私は、専務に紹介してもらった仕事の他にも、夜中にファミレスでバイトをしていた。
それはお金の事よりも、一人の時間を作らないため。
一人になるとあれこれ考えてしまい、凛様が恋しくて死にそうになる。
凛様を裏切った自分が許せなくて、生きる気力を失ってしまう。
生真面目な性格がこういう時も災いして、約束を守れなかった自分が許せなくて苦しくて前へ進めなくなる。
でも、そんな自分を繋ぎ止めているのは、斗真の存在だった。