シンデレラは騙されない


会長室へ向かうには1階のエントランスにあるエレベーターホールを使わなきゃ、8階までは行けない。

3階が職場の私はこの面倒くさい行程にうんざりしながら、でも、絶対にゲットしたい仕事のためにエレベーターの中にある鏡で身だしなみを整え、そして自分に気合を入れた。

……麻里、頑張れ!!

8階は一つのフロアを広々と使っていた。
エレベーターを降りた所に、専用の秘書が座っている。
私は用件を告げると、その先の会長室へ案内された。

そのフロアには、会長室を始め、要職の人のための会議室、あと、リラクゼーションルームという凡人の私には馴染みのない不思議なスペースがあった。

私はキョロキョロしたい衝動を抑え、その秘書の方の後ろを歩く。

すると、ひと際立派なドアの前に通された。

「会長、5時からの面接の方を連れてまいりました」

そのドアの向こうには、社内雑誌で何度も見た会長の顔が見える。
私は一気に緊張が増して挙動不審になってしまう。

「どうぞ、こちらへいっらしゃい」




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