シンデレラは騙されない
酷い…
酷すぎる…
私って、何て怖い女なの。
今の言葉、凛様を名指しで言ってるようなもんじゃない。
「凛様…
ごめんなさい…
別に凛様の事を言ってるわけじゃなくて」
さっきまで私の顔を覗き込んでいた優しい凛様は、もうそこにはいない。
正面に見える壁一点を厳しい顔で見つめる凛様は、もう別人だった。
「麻里は…
敷かれたレールの上に乘って生きていく人生の方が価値があると思うか?
好きでもない下着の事をあれこれ考える生活に魅力を感じなかったら?」
凛様はまだ壁をジッと見つめている。
心に巣作っている不満やモヤモヤを必死に飲み込みながら。
「それは…
それは、きっと、私には分からない。
それは、この家の子供として生まれた凛様の選択…
だけど、さっきの凛様の話からは、今の凛様の生活に夢や希望は感じられなかった。
ただ、反発心だけで今の生活を続けているのなら…」
私の中の理性がもう止めなさいと叫んでいる。
私はお節介にも程があると思い、そこで口を閉じた。