シンデレラは騙されない
「続けているなら…?
いいから、続けて言って」
私はもう一度、隣に座る凛様を覗き見た。
そこに見える凛様は、何だかポカンとしている。
こんなにズカズカと心の中に入り込んできた人なんか今までいなかったみたいな、そんな初めての経験に宙を視線が彷徨っている。
私は凛様の救世主になりたいと思った。
漠然と… 意味もなく…
「この間、山本さんも言ってました。
この由緒正しい家柄に生まれてくる人は、神様に選ばれた人だって。
凛様が反発心はあるけれど、でも、これといった何かを見つけ出せないでいるのなら、自分に与えられた仕事をやってみるのもいいかもしれない。
なんて、偉そうでごめんなさい。
でも、私は、凛様がバリバリに働く姿を見たい気がします。
だって、今日、すごく似合ってたから…
あ、スーツです、本当にカッコよかった…」
凛様は顔を両手で覆うと、そのままこめかみを指で押し始める。
苦悩に満ちた凛様の顔を初めて見た。
多分、凛様は、私達凡人には到底理解できないジレンマや歯がゆさと、生まれた時から向き合っている。