シンデレラは騙されない
会長の瞳は潤んでいる。
何だか私まで泣きそうになった。
「1年の住込みは全く苦になりません。
弟も母も了承済みで、弟はお姉ちゃんがそんなに頑張ってくれるなら、僕も絶対に大学に合格するって意気込んでくれています。
だから、もし、雇っていただけるのなら、精一杯頑張ります。
どうぞよろしくお願いいたします」
会長は専務と目配せをして、そして、私を見て頷いてくれた。
「麻木麻里さん、こちらの方こそよろしくお願いします」
そして、そこからの説明は専務がしてくれた。
来週から家へ来てほしいという事。
専務の奥様、会長の娘さんになる方は、工場を拡大するためにしばらく海外勤務になるという事。
そして、その息子の星矢君は、今5歳で、来年小学校受験を控えていて、英語を習得させたいという事だった。
私はたくさんの書類にサインをして、注意事項が書かれた冊子になった書類をもらう。
色々な決まりが多そう。
「じゃ、麻木さん、来週からよろしくお願いしますね」
笑顔で対応してくれた会長に、私は感謝の思いを込めて深々とお辞儀をした。