シンデレラは騙されない


凛様は空っぽになった自分のグラスにシャンパンをまたなみなみと注いだ。
凛様がそのグラスを手に取ろうとした時、私はすかさずそのグラスを持ち上げる。

「凛様、私が飲んでいいですか? これ…」

凛様を精神的に追い込んでいるのは間違いなく私。
私が余計な事を話さなかったら、今夜のこの時間は楽しくシャンパンをたしなんで終わっていたはずなのに。

だから、私も飲む。
飲んで、飲んで、最後にはもう一度凛様に謝りたい。

グラスを取られた凛様は、うんともすんとも言わずただ私を見ている。
私はそんな凛様の視線を感じながら、シャンパンを一気飲みした。
最高級のシャンパンのはずなのに、全く美味しくない。

凛様の純粋な心にダメージを与えてしまった自分が許せなかった。
そんな後悔の気持ちが、美味しいシャンパンを台無しにしている。

「麻里ってさ…
色んな意味で俺の心を簡単にこじ開ける。
こじ開けた後は、ちゃんと責任を取ってくれるんだよな?」



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