シンデレラは騙されない
凛様は空っぽになったグラスを私から取り上げた。
そして、また、シャンパンをなみなみと注ぐ。
凛様のやり切れない微笑みは、私の母性本能を痛い程突いた。
何て言えばいいのだろう…
言葉に表すのが難しい…
切れ長で奥二重の涼しい瞳、鼻筋の通った整った鼻、くちびるはちょっと小ぶりだけど笑うと左側の口角の下に丸いえくぼができる。
髪の色はブリーチを使ったアッシュ系のグレーで、所々に色を入れミュージシャン感満載でカッコいい。
必死につっぱっているけれど、でも、それでも育ちの良さが滲み出る。
凛様はそれを邪魔としか思ってないみたいだけど。
私は立ち上がると、さっき飲まずに置いていたもう一つのグラスを手に持った。
なみなみに注がれたシャンパンの小さな泡が、早く飲んでほしそうにぷくぷくと泣いているみたい。
凛様からの質問にどう答えていいか分からない自分がいる。
好きなのは確かで、でも、責任を取るほどに好きなのかはまだ分からない。
私はまた一気にシャンパンを飲んだ。
凛様と駆け引きなく正直な心で話がしたかったから。
「凛様の心はずっと閉じていたんですね…
もし、私がこじ開けたのなら、今の凛様の気分はどうですか?
最高? それとも最悪…?」