シンデレラは騙されない
凛様は私の口に当てていた人差し指で、今度は私の顎をそっと上げる。
凛様の細めた目から奥二重の線がはっきりと見えて、その少年のような愛くるしい表情に私の心臓はバタバタと暴れ出す。
「俺が変わったら、麻里は俺に何をしてくれる?」
「何を…?」
凛様の吐息から漏れ出すシャンパンの匂いに、私は頭が働かない。
でも、もし、凛様の言うように凛様が働く男性に変わったのなら、それは何て素敵な事だろう。
「…凛様は、何が欲しいんですか?」
私の声はかすれていた。
うっとりを通り越して、メロメロのグダグダ状態…
「俺は…
麻里がほしい。
麻里の全ての権利を所有したい。
麻里の本物の愛が、俺はほしい…」
私は三秒ほど目を閉じた。
凛様に見つめられたままでは、凛様の言葉の意味がよく理解できない。
心は凛様の言葉に溺れていても、でも、頭はしっかり私に現実を告げる。
私はゆっくりと目を開けると、凛様の瞳を真っ直ぐに見た。
「凛様…
それは、無理で」