シンデレラは騙されない
凛様は最後まで言わせてくれなかった。
私の言葉をかき消すために、私のくちびるに当たり前のようにくちびるを重ねてくる。
そのキスは優しいけれど独占欲に満ちていた。
その先に私が紡ぐはずだった言葉は凛様の情熱に飲み込まれ、そして、私の心や魂までも凛様の熱いキスの虜になる。
でも、かろうじて残っていた私の理性のかけらが、凛様から顔を引き離した。
「凛様… 無理です…
こんな事、絶対にダメ…」
凛様はずるい。
こうやって私が凛様から離れられないようにしるしをつける。
「ごめん、麻里…
俺が無理なんだ…
麻里の事ばかり考えて、もう、麻里は俺の空気みたいで…
このキスも、麻里の肌の温もりも、俺がこれがなくちゃ生きていけない。
初めてなんだ。
子供の頃から、何もかも満たされていて、欲しい物なんて一つもなかった。
物はもちろんの事、友達や恋人だって…
でも、今の俺は、麻里がほしい。
麻里を愛したい。
麻里から愛されたい。
麻里と、付き合いたい…
それって、ダメな事か…?」