シンデレラは騙されない


「今日、夜にでも、スタジオに行ってみます。
多分、そこに居るのは確実だと思いますから」

私は会長の心配そうな顔を見て、心の底から落ち込んだ。
私があんな事を言ったせいで、凛様はこの家に居る事すら嫌になったのかもしれない。

きっと、会長も綾さんも、凛様の血を分けた家族でさえ、凛様の生活に異を唱える人はいなかったはずだから。

それなのに私は……
何様のつもりであんな事を言ったんだろう…

凛様の心に深く根付いているこの跡継ぎ問題を、簡単に軽々しくああだこうだ言う資格なんて私にはないのに。

考えれば考えるだけ、更に凹んだ。
あの日私に向けられた凛様の表情や、言葉や、キスや、抱擁や、眼差しは、一体何だったんだろうって、訳が分からなくなる。

忽然と姿を消した理由も…

そして、いつの間にか、会長も専務もいつもの日常に戻った。
きっと、専務は凛様に会えたに違いない。
元気に暮らしている事を確認した二人は、また忘れた頃に帰ってくると呑気に構えている。

でも、そこから、更に一か月が過ぎて、いつもの凛様のルーティンじゃない事に気付き始めた。







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