シンデレラは騙されない


それから、時間はバタバタと過ぎた。
綾さんがタイから一時帰国して、四日間程星矢君と一緒に過ごせる事になり、私は久しぶりに実家へ帰った。

三か月ぶりの我が家にホッとしたのか、斉木家での日々を空元気で過ごしていた私は、母と弟の顔を見たら泣きそうになった。

結局、凛様に恋してしまったのは間違いなくて、凛様に会えない寂しさや、それより何よりも成就できない自分の恋愛が可哀想で、母達には疲れたと笑顔で言って、自分の部屋に閉じこもりひとしきり泣いた。

切ないとか虚しいとか色々な感情が入り混じる中、凛様の優しい言葉だけがオブラートに包まれて私の耳元をかすめる。

……麻里を愛したい、麻里から愛されたい、麻里とつき合いたい。
それって、ダメな事か?

私はティッシュで何度も涙を拭う。

……凛様、それって、ダメな事です。

何がダメな事か、ノートに書き留めておこう。
もし、またそう聞かれた時に、身分違いの男女は恋をしちゃダメという事を、ちゃんと泣かずに伝えたいから。



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