シンデレラは騙されない


そして、その日は突然訪れた。
珍しくその夜は、会長も専務も揃っていて、星矢君を囲んで久しぶりに家族団らんで夕食を取っていると、彼は風のように現れた。

私は清水さんと一緒に夕食を取るため、自分の部屋でくつろいでいた。
会長達の夕食が終わった後に、私と清水さんは遅い夕食を取る。
場合はよっては、星矢君の体調次第で、私の夕食はもっと遅くなる時もあるけれど。

嵐の前の静けさ…
私は久々にアロマオイルに電気を当てて、リラックス作用のある香りに身を委ねていた。

綾さんが帰ってから、星矢君の気分が上がらない。
星矢君の気分を上げるには私が元気にならなきゃいけないと思っているため、私はできる限りの事を色々試していた。

でも、今日は、何だか心が休まらない。
私はソファに寝転んで、ラベンダーの香りを胸一杯に吸い込んだ。

すると、離れにつながる廊下を誰かがドタドタと走ってくる音が聞こえた。

「先生、麻里先生!
来て、早く、早く」





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