シンデレラは騙されない


星矢君は、鍵をかけずにおいた私の部屋のドアを慌てて開けながら大きな声でそうだ叫んだ。

「凛太朗が帰って来たんだ!
麻里先生、凛太朗が変身してる。

早く、早く、リビングに来て!」

私は頭の中が真っ白になる。
……え? どういうこと?

星矢君に詳しい事を聞きたかったけれど、でも、星矢君は私を連れて早くリビングに行きたいらしい。

「星矢君、ちょっと待って…
今、準備をするから…」

準備なんて大してする事はないのに、バッグの中身を見たり上着を取りに行ったり心臓のドキドキを鎮めるためにノロノロと時間を稼いだ。

「麻里先生、早く~~」

そんな私の手を引いて、星矢君は廊下へ飛び出した。
星矢君は嬉しくてたまらないみたいで、私の手を引きながらスキップをしている。

「星矢君……
おばあ様もお父様もいらっしゃるのに、先生が行っていいのかな…?
家族でお話しがしたいんじゃないかな…?」

幼稚園児の星矢君相手に、私は真剣に心の迷いを吐き出す。

「いいの!
僕はすぐに先生に見せたいんだもん。

変身した凛太朗をね」






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