シンデレラは騙されない
私と凛様の微妙な関係を全く知らない、可愛い星矢君。
……先生、壊れちゃうかもしれないよ。
リビングのドアを思いっきり開けた星矢君は、開口一番に凛様を呼んだ。
「麻里先生、見て、見て!
ほら、凛太朗、変身しちゃったんだ~~~」
私の手を引いていた星矢君は、すぐに凛様の手を引いて私の前へ連れて来た。
私は本当に何が起こったのか分からない。
星矢君が連れて来た凛様は、まるで別人だったから。
私はしばらくポカンと凛様を見ていた。
目の前に立つ凛様は、もうミュージシャンじゃない。
グレーで染めていた髪の色は黒髪になり、長めでツンツンしていた髪形はベリーショートになりサイドをワックスで流したスタイルはすごく凛様に似合っている。
そして、濃紺のスーツを着て横長のスタイリッシュな黒縁眼鏡をかけて、どうだと言わんばかりのどや顔でそこに立っていた。
あのカジュアル系の凛様の雰囲気は微塵もなくて、顔つきも立ち振る舞いも全てが完璧な三代目御曹司……
凛様にときめきが止まらない。