シンデレラは騙されない
え? ギター弾かない?
でも、私は動揺を隠した。
とにかく、自分の気持ちは今のこの斉木家には何も関係ないし必要ない。
膨れ上げる凛様への気持ちを、どうにかして心の奥に押しやった。
「星矢君、凛様は素敵な人だから、どんな風になっても似合うと思う。
今の凛様も、以前の凛様も、どっちも素敵です」
私はこの家族団らんの場から早く退散したかった。
凛様が帰ってきた…
それも、びっくりするくらい素敵になって…
凛様は訝しそうに、私を見た後に会長や専務を見ている。
そして、黒縁眼鏡をしているせいか、視線が鋭く見えて何だか怖い。
「私はこれで失礼します…
会長、専務、家族団らんのところ、どうもすみませんでした。
星矢君、また、後でね」
凛様に声をかける余裕はない。
私が軽く会釈をすると、会長が微笑みながらこう言ってくれた。
「まだ居ていいのよ。
あなたは大切な星矢の家庭教師なんだから」
私は笑みを浮かべて首を横に振った。
凛様の視線が痛すぎて、涙が出てきそうだから。
「お気持ちだけで嬉しいです。
お邪魔しました…」