シンデレラは騙されない
私がリビングから出ると、そこに清水さんが待っていた。
「麻里先生、ご飯食べましょ」
清水さんは私を見ると、お腹が空いたというジェスチャーとともにそう誘ってくれた。
私の母よりも年上の清水さんは、実は凛様のナニーをしていたという。
山本さんが今の星矢君のナニーをしているように、清水さんは綾さんと凛様のナニーだった。
お金持ちの家の生活習慣は、平凡な家庭で育った人間にとっては不思議な事だらけ。
お母様がいて、ナニーがいる。
でも、星矢君に実際接していると、忙しい綾さんの代わりが必要なのはよく分かった。
凛様のナニーだった清水さんは、今でも子供の時と変わらない愛情を凛様に注いでいる。
厨房の奥にあるテーブルで二人で食事をしていると、厨房の入口の方が騒がしくなった。
「ほら、この家のアイドルが二人お見えになったよ」
清水さんは私を見て笑ってそう言った。
すると、すぐに、星矢君が私に向かって走ってくる。
凛様と追いかけっこをしているみたいで、私の背中の方に回ってそこにしゃがみ込んで隠れてしまった。
「星矢~~、どこだ~~~」