私は強くない
「2人を巻き込んで、ごめんね。私は大丈夫だから。心配しないで」

そう言うのが、私の精神状態の中でギリギリの所だった。

「いいんです、慶都さんが悪いんじゃないんだから。そんな事言わないで下さい」

「そうですよ。ケジメつけてない拓真が悪いんですよ」

2人が慰めの言葉をくれる。
もうこれだけで、十分。
私はやっていける。大丈夫。
大丈夫。


どれくらい時間が経ったんだろうか。
もうすぐ日付けが、変わろうとしていた。
遅いからと、2人を家に帰した私はある事を考えていた。

…………

「ねぇ、陽一。大丈夫かな慶都さん」

「大丈夫だって、慶都さんが言ったんだから、それを信じるしかないだろ」

慶都から、もう大丈夫だから2人一緒に帰りなさいと、言われた陽一と美波。
車の中で、送り出してくれた、慶都の顔を思い出していた。
3年付き合った相手に、浮気され、挙句に浮気相手が妊娠。結婚するから別れてくれと言われて冷静でいられるんだろうかと。
陽一と美波にとっては、拓真は会社の同期。慶都は仕事を教えてくれた先輩。2人をよく知ってるからこそ、胸が痛かった。

「私は、奥菜許さないからね。二股なんて許さないから」

「俺だって、拓真を擁護する気ねぇよ。あのケジメのつけ方は間違ってる」

車の中で、重い空気が流れた。


………


2人が帰った後、私は考えていた。これからの事を。
このまま拓真に会わず済む方法が、ある訳なんてない事を。同じ会社にいる以上、違う部署だからと言って会わなくて済むなんて事はない。
どうする?

会社を辞める?
そして、ここも引っ越す?
ううん、私が逃げるなんて、どうしてそんな事しないといけないの?
悪い事なんてしてない。私は。

拓真から、逃げるような事をする必要なんて、私にはない。

だったら、私はどうしたらいい?

どれくらい時間が、経っただろう。
私の中で答えが出た。

そう。
私は、逃げない。
強い、そう、強いんだから。





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