私は強くない
私は、気持ちを切り替える為に、朝からシャワーを浴び、会社に向かった。
「おはよ」
「あ、おはようございます。慶都さん」
私の声が届いたのか、後ろを振り返った美波と挨拶を交わす。
「昨日は遅くまで、ごめんね。金谷君も大丈夫だった?」
「大丈夫ですよ。ただ、なんだかもやもやした感はあるんですけどね」
いきなり聞かされた2人には、衝撃的な事実を受け止めるには、時間が必要なのかもしれない。美波と話をしながらそんな事を考えていた。
けど、時間は待ってくれない。ただ進んでいくだけ。
私は前を向いて行くだけ……
「おはよう、奥菜君」
「えっ、あ、おはようございます」
会社の前で、拓真に会った。
思いの外、普通に挨拶をしていた。
びっくりしていたのは、拓真の方。
横で、美波が無言で睨んでるけど…、私は構わず続けた。
「この間、もらった書類なんだけど、不備があったんで、再度提出して下さいね。また人事の方に取りに来てください」
「あ、はい。…分かりました。……あの慶……」
「期限は今週末ですよ」
「あ、はい…」
何か言いたそうにしていたけれど、私はそれを聞こうとはしなかった。
あくまで、会社での上司としての対応をした。
それを感じ取った拓真も、それ以上何かを言おうとはしなかった。
「慶都さん。文句言えばよかったのに」
私の横で、無言の圧力をかけていた美波が、ムスッとしながら話てきた。
「会社でしょ、分けなきゃ。美波の言いたい事は分かるけどね。私は上司よ」
こんな事を言うから、『強いから』と言われてしまうんだろうな。
だけど、プライベートを仕事に、持ち込みたくはなかった。今まで、ちゃんと分けてきたから、プライベートと仕事を。こんな事で、今までやってきた事を潰したくなかった。
ただ、拓真に話かけるだけでも、私にとっては勇気のいる事。
もちろん、平常心なんかじゃいられない。
でも、張り詰めた糸が切れてしまったら、私は引き返せない所に行ってしまうのが分かっているから、美波が言うようには出来なかった。
今の私は、前を向いて行く事で、何かをする事で、自分自身を保っていた。
「おはよ」
「あ、おはようございます。慶都さん」
私の声が届いたのか、後ろを振り返った美波と挨拶を交わす。
「昨日は遅くまで、ごめんね。金谷君も大丈夫だった?」
「大丈夫ですよ。ただ、なんだかもやもやした感はあるんですけどね」
いきなり聞かされた2人には、衝撃的な事実を受け止めるには、時間が必要なのかもしれない。美波と話をしながらそんな事を考えていた。
けど、時間は待ってくれない。ただ進んでいくだけ。
私は前を向いて行くだけ……
「おはよう、奥菜君」
「えっ、あ、おはようございます」
会社の前で、拓真に会った。
思いの外、普通に挨拶をしていた。
びっくりしていたのは、拓真の方。
横で、美波が無言で睨んでるけど…、私は構わず続けた。
「この間、もらった書類なんだけど、不備があったんで、再度提出して下さいね。また人事の方に取りに来てください」
「あ、はい。…分かりました。……あの慶……」
「期限は今週末ですよ」
「あ、はい…」
何か言いたそうにしていたけれど、私はそれを聞こうとはしなかった。
あくまで、会社での上司としての対応をした。
それを感じ取った拓真も、それ以上何かを言おうとはしなかった。
「慶都さん。文句言えばよかったのに」
私の横で、無言の圧力をかけていた美波が、ムスッとしながら話てきた。
「会社でしょ、分けなきゃ。美波の言いたい事は分かるけどね。私は上司よ」
こんな事を言うから、『強いから』と言われてしまうんだろうな。
だけど、プライベートを仕事に、持ち込みたくはなかった。今まで、ちゃんと分けてきたから、プライベートと仕事を。こんな事で、今までやってきた事を潰したくなかった。
ただ、拓真に話かけるだけでも、私にとっては勇気のいる事。
もちろん、平常心なんかじゃいられない。
でも、張り詰めた糸が切れてしまったら、私は引き返せない所に行ってしまうのが分かっているから、美波が言うようには出来なかった。
今の私は、前を向いて行く事で、何かをする事で、自分自身を保っていた。