私は強くない
「な、名取課長なんで、ここに」

床に慶都を組み敷く拓真と、意識をなくしている慶都を見て、二人が付き合っていたと、分かった名取だったが、拓真を突き飛ばし、慶都を抱き抱えた。

「な、名取課長!」

「奥菜、何があったが知らんが、どんな事があっても女に手を挙げるもんじゃない。倉橋をベッドに連れて行っている間に、帰るんだな」

「あ、あの…」

「なんだ?俺が冷静でいる間に、帰れ!って言ってるのが聞こえなかったのか?」

拓真は名取の顔を見ると、慌てて帰って行った。

慶都をベッドに寝かせ、名取はある所に電話をかけた。


あれ?なんで私、ベッドで寝てるんだろ。
…っ痛、頭が痛い。
あ、そうか、床に押し倒されたんだ、拓真に。
はっ、あのまま?

ううん。服は朝のまま。

誰が…

「許せないです!絶対に!」

「俺も見損ないました」

あれ?美波と金谷君の声?
なんで、私の部屋に?

「まぁ、男と女だからな。何があるのかは、当事者しか分からんがな。女に手を挙げるのは賛成しない。ただ、俺は、倉橋の相手が奥菜で驚いたよ」

……!
名取課長。
知られたんだ。拓真だって。
でも、なんで名取課長が。

ゴトッ

「あ」

物音に気がついた、名取課長がドアを開けた。

「倉橋、大丈夫か?」

みんなが見てるのに、あの時と同じように優しく接してくれた。

「はい、すみません。ご心配をおかけしました」

「慶都さん。ほんとに大丈夫ですか?
病院行きます?」

美波が抱きついてきた。

「名取課長が行ってなかったらやばかったですよ、慶都さん」

「え?金谷君達が名取課長呼んでくれたんじゃないの?」

「いいえ、俺らが来た時にはもう、拓真いなかったし」
「そうですよ。名取課長が私達を呼んだんですよ」

「え?あ…」

「倉橋、お前から俺が電話もらったから、慌てて来たんだよ。意識なくなってたし、女性がいた方がいいと思って木村を呼んだんだ。金谷に頼んでな」

「え?」

「俺も久しぶりに名取課長から、電話あってびっくりしましたよ。AG辞めてから随分経つのに」

「仕方ないだろ、木村の番号知らないし、金谷の番号消さずに置いてて、助かったよ」

「名取課長」

「ん?どうした。木村」

「どうして、慶都さんのマンション知ってたんですか?」

「…え」

「おい、何聞いんてだよ!」

「だって〜。気になるじゃない。陽一ならないの?」

「いや、気になるけど、けど!」

珍しく、美波に痛い所をつかれている名取課長。
そのやり取りをみていたら、

「…で、どうして名取課長だったんですか?慶都さん」

今度は私に振られた。ニコニコしながら、核心ついてくる。
私が、弱っていても容赦ないな、美波は。
ふっ、と笑って。

「内緒」

「えーなんでですかぁ!」

二人で笑いあってると、名取課長が

「もう大丈夫だな?俺は帰るよ」

「え、帰るんですか?」

表情が固まった。
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