私は強くない
起きてきた倉橋に、奥菜の荷物をまとめろと言った。
もうこれ以上、奥菜と関わらせたくなかったからだ。
俺が持って行くと言うのに、頑なに拒否。2人で押し問答していると、木村が行くと言い出した。
2人で行ってくる、と。
木村達に言われて、倉橋持ってしぶしぶ納得したようだった。

あげく、出かける時に木村から『いろいろとお願いします』と、言われてしまった。
年下の2人から、からかわれるなんて、上司としての威厳が…。

部屋に残された倉橋と、微妙な空気になりかけた時、倉橋から、迷惑をかけてすみませんでした、と。なぜお前が謝るんだ、悪いのは奥菜じゃないか。

「本当は帰したくなかったんだ」

そんな言葉が出ていた。

「私が甘えてもいいんですか?」

倉橋にそんなことを言わせてしまった。倉橋だから甘えてほしいと思っているのに。震える倉橋を抱きしめ、

「倉橋だからいいんだよ」

と伝えた。

愛おしいと思った。
見つめていると、顔を上げた倉橋と視線があった。
そして、倉橋はすっと目を閉じた。

そのまま流れるようにキスをした。

倉橋は、俺の首に両手回してきた。
驚いたが、さらに強く抱きしめ、さらに深くキスをした。

口を開け、舌を絡み合わせ、何度も。

その間、お互いの息が上がるのが分かった。呼吸するのも分からなくなるぐらいに激しく…

そして、倉橋の首筋に唇が降ろした、そのまま服の中に手を入れた時だった。

2人が帰ってきた。

俺も倉橋も慌てた。


お互い乱れた呼吸を整え、何もなかったように取り繕ったけれど、バレバレだったと思う。

あのまま、帰ってこなかったら、最後まで…

倉橋への想いが、積み重なっていく。
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