私は強くない
懺悔
プレゼンの日まで、あと数日。

私は自分が、やれる事をやり切ったと言えるように、目の前にある問題にかかっていた。

悔いはない、そう言えるように。




ある日、残業をしていると私しかいない人事部に物音がした。

「誰?」

ドアに向かって叫んだ。
返答がない、でも明らか誰かがいる。
もう一度、声をかけた。

「いるんでしょ?誰?…」

え?
ドアを開けて、拓真が入ってきた。

「なんで、どうして?」

「慶都、どうかな、って陣中見舞いかな…」

いつもの自信に満ち溢れた、拓真ではなかった。

「…ただそれだけ?」

「あ、うん。もう、追い込みだろ。邪魔するのはよくない、って思ってたんだけどな。いけそうか?」

「…うん。なんとかね。久々だったから、最初はちょっと戸惑ったけど…」

「そっか。俺も負ける気ないからな。お互い頑張ろうな。…あれから、ちゃんと話してなかったし、謝ってなかったから、プレゼンの前にと思ったんだ…」

「…そっか、そんなよかったのに。もう終わった事、でしょ?」

そう、終わった事。
私の中では、過去の男。
もう関係ない。
今さら、謝られても困る…。

「…悪いな、困ってるのも分かってるんだけど、気持ちが収まらないんだ。…それに…」

拓真は、何かを考え込んでいるようだった。
黙ったまま、何も言おうとしない。

どうしようかと思っていたら、

「…なぁ、慶都。俺たち、やり直さないか」

「え?なんで…」

何を言ってるの?
やり直す、誰が?誰と?
頭が混乱する。

「何言ってるの?拓真。結婚するって言ってたじゃない!あなた無責任すぎるわ!」

「…結婚は…しない」

な、何を言ってるの…

何も言えなくなってる私に、拓真が続ける。

「…妊娠、嘘だったんだ」


突きつけられた現実に、私はその場から動けなくなっていた。

< 46 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop