私は強くない
俺の腕の中で落ち着き、話を聞いて怒りがこみ上げてきた。

少しでも、奥菜を見直した自分が許せなかった。
あれほど、倉橋に関わるな、と言ったにも関わらず、もう一度やり直したいだと?倉橋をなんだと思ってるんだ。
そんな簡単に戻れる問題じゃない、散々傷つけておいて。

一人にするんじゃなかった。

誤解されてでも、倉橋と一緒にいるべきだった。


それなのに、倉橋は

「ごめんなさい。名取課長にまた迷惑をかけてしまって」

と謝ってきた。

何を言ってるんだ。
一度も迷惑だと思った事などないのに。

今日は一人にしておけない、そう思った俺は、

「ここに泊まるぞ」

と言って、倉橋にキスをした。


そして、そのまま倉橋は眠りについた。



眠ってしまった倉橋を、ベッドに運び、金谷に電話をしていた。


「金谷か、こんな時間にすまんな。電話いいか?」

「は、はい。大丈夫ですよ。またなんかありましたか?」

「奥菜の事なんだが。金谷、結婚の事なんか言ってなかったか?」

「いえ?俺は何も聞いてませんよ。結婚はする、とは言ってましたけど」

「そうか…」

「また、なんかやりましたか?拓真のやつ」

「倉橋にやり直したい、と言ったらしいんだ」

「ええ?そんな!なんすか、それ」

「今日言われたみたいでな、怯えてるんだ、倉橋が」

金谷は、木村から聞いた、と奥菜を問い詰めます!と言って電話を切った。

なんで、こうなるんだ。
俺には奥菜が、何をしたいのかが分からなくなっていた。
プレゼンが失敗すれば、いいと思って動揺させてるのか。
このままじゃ、倉橋の心は持たないだろう。

早く答えを出さなければ。

そう思いながら、寝室に向かった。

ベッドで眠る倉橋の横に俺も入った。
倉橋を抱きしめて、耳元で伝えた。

「倉橋、お前の事が好きだ」

そして眠っている倉橋にキスをした。


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