私は強くない
散々、拓真を落としたあげく、これで私の用事は済んだからと、店に1人拓真を残して帰った私。

スッとした。
今まで、何を我慢してたんだろう、と思うぐらいに。
拓真にしたら、多分私がヨリを戻して、と言うと思ってたはず。
そう思われてた事に腹が立つけど、あの驚き方だと、思ってただろうな。

もう、浜口香里と結婚したらいいんだよ。
あの子なりに、引き止めるので必死だったんだろうけど、人の不幸の上に成り立つ幸せなんて、幸せなんかじゃないから。


やっと、私自身スタートラインに立てたような気がした。

これで、あの人に向かえる。
清々しい気持ちで。
早く会いたい。
そう思った。



「あの…」

え?

また誰かに呼び止められた。
また?

「今誰と会ってたんですか?」

振り向くと、そこに数時間前にカフェに置き去りにした、浜口香里がいた。


「え?どうしてここにまだいるの?」

「彼が、まだ会社だって言うから待ってるんです」

そんな嘘ついたんだ。
お互い様だよね、ホント。

「私が誰と会うかなんで、あなたに関係あるのかしら」

「あります!彼は拓真さんは私の彼です」

若いって、いいわ。
こんな気持ちになれるんだから。
羨ましい限りね。

申し訳ないけど、関わりたくない。

しかも、置いて駅に向かおうとしているのに、離れようとしない。

あまりにも腹が立ったから、電話で呼び出した。

「会社の前で待ってるから、来て」

さっきあれだけ、ひどい事あったから来るとは思わないけど、…って、来た。

「やっぱり、考え直して…」

店から出て来た拓真は、私の後ろに隠れている浜口香里を見つけ、顔色を変えた。

「な、なんでいるんだよ!」

「拓真さん、まだ会社だって言ったじゃない!」


2人のやり取りを見ながら、放置して行こうとした時、腕を引かれた。

「やり直す事にしたんだ、俺たち」

「え?は?何言ってんの?」

「別れたって言ってたじゃない!」

会社近くの公園で、痴話喧嘩。
巻き込まれた私。

「拓真いい加減にして!さっきも言ったでしょ!え?…っ」

腕を掴まれてた私は、そのまま拓真に体を寄せられ、さらに頭を押さえられキスされてしまった。


「ちょっと、何するのよ!」

口を拭いながら、拓真から離れた私は、視界の端に会いたかった人がいるのが分かった。


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