私は強くない
ピーンポーン


「…っは….」

「圭輔さん、ダメッ…」

もう少しのところで押し留まる。
慌てて、解錠ボタンを押した。

二人が来るまでに、整えておかなきゃ….って、

「なにやってんですか!名取課長!」

「圭輔」

私に触れようとする、圭輔さんの手を払いのけると、少し不機嫌になった。

「来るんだから、ダメですってば!」

仕方ないなぁ、と言いながら玄関のチャイムが鳴ったので、二人を出迎えに行ってくれた。

もう。
二人から突っ込まれる身にもなってよ、恥ずかしいのに。
….圭輔さんは、結構独占欲が強いみたい。
私からすると、嬉しいけど、二人だけの時にしてほしい。
来てもらった二人は、相変わらず疑いの目で見てるし。
美波は、何やってたんですか?と楽しそうに聞いてくるし…

でも、こんな時間が出来る事が嘘のような感じがするのも事実。
ここ数ヶ月いろいろありすぎた。

改めて、美波と金谷君に昨日あった事を報告した。

二人の第一声、

『やっぱり、終わってる』

…そりゃ、そう言うよね。
浮気相手の女に、待ち伏せされた挙句、やり直して欲しい、やり直すんだと、その女の前でキスを無理矢理するとか。

美波も金谷君も、拓真を知ってるだけに、情けないって。

…で、圭輔さんと気持ちが通じ合った事も報告した。

そして、その事で二人からいじられたのは、言うまでもない。


「…慶都さん、奥菜には、なんて言ったんですか?」

「なんて、って…あまりに腹が立ったから、欲望のままセックスしたから、こんな目に合うのよって、結婚迫られてオメデタイわね…まぁ、いろいろ」

ガチャン


私の話を聞いていた、圭輔さんと金谷君が、持っていたグラスを落とした。


「どうしたの?」

「え、いや…」

「金谷君、何固まってるの?」

「陽一、慶都さんが、あんまりストレートに話したもんだからびっくりしたんでしょ?」

「…あ、うん。だって慶都さんのイメージって、仕事教えてもらってた時の固いイメージしかないから、はっきり言うなんて…」


あぁ、セックスなんて言うもんじゃないのか。
しかし、この年で、エッチっていう方が恥ずかしい。

チラッと圭輔さんを見たら、同じ反応だし。
そんなとこだけ、私って真面目に見られてるのね。


美波と顔を合わせて笑った。


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