私は強くない
「…うーん、よく寝た!」

布団の中で、大きく伸びをした。
今日は、東和堂のプレゼンの日、そして今日全てが決まる。

決着する。

営業部の時に着ていたスーツに腕を通し、鏡を見た。

うん、私は出来る大丈夫!

また私が営業部にいた頃、プレゼンや商談がある時には、必ずこのスーツを着て鏡を見て、自分自身に気合いを入れていた。

やれる、私は大丈夫。

♪♪♪♪

誰からかかってきたなんて、見なくても分かった。

「おはようございます。圭輔さん」

「おはよう、大丈夫か?」

「大丈夫です」

「見てるからな」

「はい。見てて下さい、負けませんから」

「ん、分かった。頑張れよ、慶都」

「…はい」

静かに電話を切った。
そして、私は会社に向かった。


今回は、他社との競合がない代わりに、より良い案を提案したいと言う事で、社内でのプレゼンをしてほしいと東和堂へ提案したらしい。

よって、今日は東和堂の営業、下永さん、中井さん、長浜課長がここ、AGに来訪したくれていた。

「今日はご足労していただき、ありがとうございます」

挨拶をした圭輔さんの横で、私も頭を下げた。
そんな私に気がついたのは、東和堂の長浜課長だった。

「お、倉橋さんじゃないか。久しぶりだね」

「ご無沙汰しております。覚えていただいてたんですか?長浜課長」

「当たり前じゃないか。今日は楽しみにしてるからね。私だけじゃなく、下永も中井も期待してるよ」

「…ありがとうございます」

長浜課長だけじゃなく、下永さん中井さんも私を見て、頷いてくれた。覚えてもらってた事が嬉しかった。


「今回は、この倉橋、佐野、奥菜でプレゼンさせていただきます……」


圭輔さんが、今回のプレゼンの説明をしていく。


そして……

「倉橋」

「はい!」

私がトップバッターだった。

圭輔さんに名前を呼ばれ、席を立った。圭輔さんは、私を見て頷いてくれた。大丈夫、やってこい、って。

大丈夫。
軽く頷いた。


「始めさせていただきます。倉橋です。今回はこのような機会をいただき、ありがとうございます。最後までよろしくお願いします」

頭を下げながら挨拶をした。


そして、

私の戦いが始まった。


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