私は強くない
あと、少し…もう少しで終わる。
今までにない緊張が私を襲っていた。

「……です」

終わった。
私の戦いは終わった。
力は出し切った。
これで負けても悔いはない、と思えるほど私の中で達成感があった。
圭輔さんをチラッと見た、優しく目で合図してくれた、よくやったと言われているような感覚がした。


「奥菜です。よろしくお願いします」

続いて、拓真の番が来た。
久しぶりに見る拓真のプレゼン。
私は、拓真がするプレゼンが好きだった。私にはないものを持っていたから、後輩ながら拓真のプレゼンを見て、勉強したぐらいだった。
3年経って、圭輔さんが係長へ推そうと思う、と言っていたのが納得出来る程の出来栄えだった。
私はこんな彼が好きだった。なのに、どこで歯車が狂ったんだろう。何がいけなかったんだろう。この人の横で笑ってたかった、ただそれだけだったのに…

「……以上です。ありがとうございました」


拓真のプレゼンが、終わった。


そして、佐野主任。


佐野主任も、慣れない営業部でやってきただけあって、それはそれで凄いと思えた。



そして、3人のプレゼンが終わった。

「今日はありがとうございました。結果ですが、一旦休憩に入ります。14時からです。よろしくお願いします」

圭輔さんが、挨拶をして一旦休憩に入った。

出て行く長浜課長達を、見送った。

ふぅっ…

見送ってから、大きなため息が漏れた。

「でっかいため息だな」

「あ、あぁ。名取課長…緊張からの開放感で…」

「ま、そうだな。俺は長浜さん達と昼食だから、お前らも休憩行ってこいよ」

「はい。お疲れ様でした」

拓真や佐野主任がいるから、名取課長を崩さない、圭輔さん。
でも、私にしか見せない顔をして、食事に行った。


私達もそれぞれで休憩に入った。

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